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合成繊維に天然繊維以上の価値を!薄くて軽い生地を生み出す「カジレーネ」

透けるほど薄くて軽い生地を生み出すカジレーネ株式会社(以下カジレーネ)

旭化成アドバンスが展開するテキスタイルブランド「ECOSENSOR®︎(エコセンサー)」。今回はECOSENSOR®︎の中でも、アウトドア向けの高性能なファブリックを支えるものづくりの裏側をご紹介しよう。

“繊維の街”として栄えた石川県の、ハイクオリティな合成繊維織編物

繊維産業で栄えた“繊維の街”をいくつも擁する石川県。合成長繊維織物を得意とし、全国で生産されるポリエステル、ナイロン合成長繊維織物の約40%がここ、石川県で製造されている。産地としての特長は、伝統が培った高い技術と他の産地にはないクリエイティビティを併せ持つこと。その品質の高さは国内外で評価されており、海外のラグジュアリーブランドやトップメゾンも石川県の合成繊維生地を採用しているほど。

「KAJI FACTORY PARK」にあるカジレーネのショウルーム

石川県の繊維産業を支えている企業が、金沢市に拠点を構えるカジグループだ。糸加工、織物、ニット、繊維機械メーカーと、繊維産業の各分野に特化した企業をグループ内に抱える。そのカジグループが、この春新たに設立したのが、アミューズメント一体型の織物製造工場「KAJI FACTORY PARK」だ。カジグループの織物専業企業で、ECOSENSOR®を製造する「カジレーネ」の新工場として機能するこちらには、来場者が織物製造工程を見学できる設備が整っているほか、自社ブランドの旗艦店、北陸地方のものづくりを代表する工芸品を揃えるセレクトショップ、地元食材をふんだんに使ったレストランを併設。織物産地である地域の魅力を発信するとともに、高品質な合成繊維の魅力を発信するというのが、「KAJI FACTORY PARK」のコンセプトだ。

©2025KAJI FACTORY PARK/studiome.jp
©2025KAJI FACTORY PARK/studiome.jp
©2025KAJI FACTORY PARK/studiome.jp
©2025KAJI FACTORY PARK/studiome.jp

「KAJI FACTORY PARK」は最先端の設備を備える体験型工場。「合成繊維より天然繊維のほうが、モノがいい」「高級ブランドはあっても高級合繊はない」「どこで作られていても、合繊は合繊」といった、消費者が合成繊維に抱く誤ったイメージを覆していきたいとのこと

薄くて軽い合繊織物を生み出す工場へ

「このようなスタイルで運営される繊維工場の中でも日本最大級なんですよ」というのは、カジレーネのテキスタイル事業部長を務める高木光朗さん。カジグループのなかで織を担うカジレーネは、いわば織物のスペシャリスト。グループ企業であるカジナイロンが製造する、髪の毛の1/3の細さという超極細糸を自在に操り、薄くて軽い生地を製造する。

「KAJI FACTORY PARK」内の製造ラインでは主に、アウトドアアパレルなどで求められる軽量・高密度の織物を製造している。製造ラインのトップバッターは、織物に必要なタテ糸を準備するワーパーという工程だ。毛羽のある部位などを弾きながら極細の糸を数百本揃え、ビームと呼ばれる巨大な糸巻きに巻いていく。1本につき1500m〜3000mの糸が巻かれるのだが、このときにタテ糸の張力を1本ずつ均等に整える。

「織物製造においてはタテ糸の準備が7割を占めるといわれます。タテ糸の準備がしっかりできていないと織もうまくいかないし、できあがりの品質もよくならない。それほど大切な工程なんです」(高木さん)

タテ糸の準備を行うワーパー。手前にある巨大な糸巻きがタテ糸を巻き取るビーム

続くサイザーは、ワーパーで巻き取った糸に糊付けを行い、糸を切れにくくするという工程だ。この時に生じる残糸はリサイクルしている。ナイロン糸は樹脂に戻るのだが、現在はこれを再び糸に戻して再利用するという計画を、旭化成アドバンスとともに進めているところだ。タテ糸を織機用のビームに巻き取っていくのがビーミング。ここまでがタテ糸の準備だ。この後、製織工程に移る前の最後の準備工程として、ドローイングを行う。ヘルド(織機においてタテ糸を上下に動かすパーツ)に1本ずつ、タテ糸を通していくのだが、ここでは検査員が設計通りにタテ糸が通されているかを目視で確認していく。こうして、準備を終えたタテ糸を織機に仕掛けて織り上げていく。

ヘルドに正確に糸が通っているか、緻密な確認作業が行われる

日本最大級の体験型織物工場

「他では製造できない生地を」「日々、技術革新を」という高い目標を掲げ、軽量の合成繊維織物を織り上げるカジレーネだが、このように難しい織物を製造できる工場は少なくなってしまった。地元住民でさえ、「最高品質の合成繊維織物を生み出す石川県」を知らず、これまでのものづくりの歴史的な背景が忘れられようとしている。

「こうした現状に危機感を抱いたことから、産業観光である『KAJI FACTORY PARK』の計画がスタートしたのです。地域と連携しながら県内外の人々に合成繊維の魅力を知ってもらい、由緒ある産業の後継者を広く募っていきたいと考えています」(高木さん)

12,000㎡という広大な延床面積にこれまでにない規模の製造ラインを設けた「KAJI FACTORY PARK」は、生産量増強だけでなく地域と連携するという使命を担っている。

「パークの設立を決めたのはコロナ禍前のことでしたが、大きな社会変革をもたらしたパンデミックを経て、あらためて土地や地域とのつながりを意識するようになりました。繊維産業を元気にするためには、石川県が培ってきた繊維の歴史を振り返るとともに、地域の人々に繊維に魅力を感じてもらうことが不可欠です。ここを繊維の産地としてアピールするとともに、多くの観光客が『KAJI FACTORY PARK』を訪れることで、この地の魅力も体験していただきながら、地域に貢献していく。こうしたシナジーをここでかなえたいと思いました」(高木さん)

「KAJI FACTORY PARK」内では生地づくりの工程の見学や繊維産業の技術や背景にも触れることができる(写真提供:カジグループ

パーク設立にあたっては、「かほく市に新しい桜の名所を作ってほしい」という地元住民のリクエストを受けて79本の桜を植樹した。ものづくりだけでなく、ここの桜並木の様子が、かほく市の代表的な風景になってほしい。そんな願いを受けたものである。

写真提供:カジグループ

カジグループ

https://www.kajigroup.co.jp

KAJI FACTORY PARK

https://kajifactorypark.jp/

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