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さらりと快適、日本の夏にぴったりのベンベルグ®製高機能素材のこと

いまの時代にマッチした新・高機能ファブリックを展開する、旭化成アドバンスの「ECOSENSOR®(エコセンサー®︎)」。今回フォーカスするのは、「ECOSENSOR®」の主軸をなす機能糸、旭化成株式会社の再生セルロース繊維ベンベルグ®。古くからこの糸の機能性やサステナビリティに注目し、その特性を生かした製品づくりを行なっている「KID BLUE」のストーリーをご紹介しよう。

自宅で過ごすくつろぎのひととき。何を着る、どう選ぶ?

1日のうちでもっとも寛げる自宅でのひとときを、さらに快適に過ごしてほしい――それを実現するウエアを、女性用、男性用、子ども用と幅広く提案している「KID BLUE」。ブランド創立45周年を迎えるブランドというだけあって、顧客の年齢層も20代から70代と幅広く、中には3世代にわたって製品を愛用しているというファンも。そんな「KID BLUE」のブランドアイデンティティといえるのが、素材へのこだわりだ。「着る人がもっとも心地いいと感じる肌触りや着用感を追求したい」という思いから、ブランドスタート時から天然由来の独自素材の採用を貫いてきた。色や柄はもちろんのこと、アンダーウエアのレースも、肌触りを重視して製作したオリジナルのもの。製糸メーカーと手を組み、糸から開発することも少なくない。

そうした素材へのこだわりを特に強く感じさせるのが、定番商品のラインナップの一角を占める「ベンベルグ®ベア天*」シリーズのインナーウエアだ。1997年の発売以来、ベストセラーとなっているシリーズで、人気の理由は吸湿放湿機能を備えたさらりとした着心地にある。夏場は、衣服の下に着用することで汗によるベタつきやムレを軽減して快適な着心地をかなえ、冬場はイヤな静電気の発生を防ぐとあって、通年で活躍するインナーウエアなのだ。

*インナーに良く用いられる生地の組織(編み方)

ブランドディレクターとして、「KID BLUE」製品に精通している平野さん。

「ベンベルグ®ベア天」が生まれたきっかけは、「前身のシリーズに採用していた生地が廃盤になったことだった」というのは、「KID BLUE」でブランドディレクターを務める平野洋子さん。

「私たちはもともと、別の繊維を使ったランジェリーを展開していました。コットンでは出せない滑らかな肌触りやしなやかなドレープが特徴のシリーズでしたが、メーカー都合によりこの繊維がなくなってしまいました、それで、これに代わる新しい素材が必要になったのです。コットン100%の生地では出せないドレープや滑らかな肌触り、光沢感を備えた素材を探していたときに見つけたのが、ベンベルグ®ベア天でした」

ベンベルグ®ベア天(竺)は、旭化成株式会社が作るベンベルグ®という糸を使って編み立てた素材だ。この肌触りから合繊だと誤解されているケースも多いそうだが、ベンベルグ®の原料は、綿実油を作る時の副産物であるコットンリンター*である。

*綿の種の周りの産毛

「つまりベンベルグ®は、天然由来というだけでなく、副産物を原料としてリサイクルしたサステナブルな繊維でもあるのです。こういった背景にも共感したのですが、なによりもベンベルグ®高混率の生地であるベンベルグ®ベア天が備える優れた機能性がすばらしいと思いました」

「素肌でいるよりも気持ちいい」という「ベンベルグ®ベア天」のインナーウエア。リムには生地と同色のレースをあしらって、優しい印象に。

「ベンベルグ®ベア天」シリーズに使われているベンベルグ®高混率の生地は、「KID BLUE」が提携工場とともに開発したオリジナル素材。吸湿放湿機能のほか、接触冷感も備え、「KID BLUE」ファンの間では、「不快な夏を乗り越えるのに欠かせないアイテム」として認知されている。このような機能性を備えているのに、他社がベンベルグ®高混率の生地をまねできないのは、繊細ゆえに扱いづらいというこの糸の特性にある。

「インナーウエアには伸縮性が必要ですが、ベンベルグ®を天竺編みにするとこれが不足します。伸縮性を補うためにポリウレタンの糸を入れて編み込むのですが、ロットによって伸縮率が安定しないのです。また、糸がとても弱いので職人がこまかな調整を行いながら編み立てる必要があります。つまり、ベンベルグ®高混率の生地は大量に生産する事が難しくハードルが高いのです。

染色の工程においても、思った通りの色が出ない、ロットごとにムラが生じるといった難しさがあります。染色し直すと風合いが変わってしまうので再加工できませんから、この素材に精通する工場でないと扱えません。縫製も同様に難しく、こちらも長くこの素材を扱っている工場にお願いしています」

通年で人気の「ベンベルグ®ベア天」シリーズは、男性用のアンダーウエアも展開。

こうした困難を乗り越えて、「ベンベルグ®ベア天」シリーズは「KID BLUE」のラインナップの主軸の一つとなった。’97年の発売当時は、「天然由来の繊維」が、価格の安い「石油由来の合繊」に置き換わっていった時代であることを考えると、時代の流れに逆行することになろうとも、自分たちのこだわりを貫いた「KID BLUE」のものづくりは、さぞ特異だったろうと想像する。

「おもしろいのは、今度は時代の流れが私たちのものづくりを後押ししてくれていること。環境配慮の観点から、再生繊維で生分解性も備えるベンベルグ®素材があらためて注目されてきています。私たちもさらに環境配慮への取り組みを後押ししたいという思いから、ベア天で複合するポリウレタン弾性糸を、同じく旭化成株式会社がつくる『ロイカ®EF』というリサイクルストレッチファイバー(リサイクル率35%))に変更しました。多くのお客さまに愛されているシリーズということもあり、できる限りのアップデートを続けていきたいと思っています」

アイボリー、ブラック、グレイの定番カラーに加え、毎年、シーズンカラーが登場する。’24年はダスティなブルーを展開した。

世界中での糸の生産量のうち、ベンベルグ®が占めるのはわずか0.02パーセント。たくさん供給できない、高価、取り扱いも難しいという、メーカーにとってはチャレンジングな素材ですが、「本当にいい素材だと思うから、世の中に知られていないのはもったいない、もっとたくさんの人に知ってほしい」と平野さん。

「この糸が1枚のウエアになるまでの編み立て、染色、縫製という工程のそれぞれに職人技が息づいています。日本のクラフツマンシップが生み出すベンベルグ®︎高混率の生地が生み出す素晴らしい着心地を、ぜひ体感していただきたいと思っています」

KID BLUE
https://kidblue.com

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